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ひとりごと

ただオタクがわめくだけ。

雪が降る朝に思ったこと

おもったこと

あさ起きたら世界から音がなくなったような錯覚に陥ったことが何度かある。

最初はひどく驚いたが、そんな日は寒いのを少し我慢してカーテンを開けに布団から飛び出す。

庭に植わっていた椿が白く雪化粧しているのを見てよくにっこりしたものだった。

 

私の地元は福島県いわき市で、東北なのに冬はカラッとしているせいか、それとも比較的暖かいのか、雪は年に2~3回降ったら多い方だった。

雪が降る朝は特別寒く感じて布団からは出たくないような、でもその白い世界を見たいような、うずうずした気持ちがいつも心にあふれていた。

 

雪は静かだと思う。

しんしんと雪が降り積もるとはよく形容したもので、本当に音もなく静かに、周りの音を吸いながら雪は降る。

その静けさが、世界から隔離されたようで怖くもあったし、世界から隔離されたようで楽しくもあった。

 

今朝私は徹夜で作業をしていた。

『♪雨は夜更け過ぎに雪へと変わるだろう』

そんな曲を口ずさみながらも私の住んでいるところでは全く雪どころか雨が降る気配もなかった。

11月に雪なんて振らないよな…

少しがっかりもした。いくつになっても雪を見るのは楽しい。

 

明け方、ふと気配が消えた気がした。

ああ、雪が降ってきたんだな、11月に珍しい雪が降ってきたんだ。

そんなうれしさとともに私は何とも言えない気持ちになることを思い出した。

 

あれは 2011年3月11日のこと、大きな地震の後私は当時通っていた高校から帰らなければならなかった。

どんよりと重い雲の下に私達は制服で投げ出された。

しかし大きな地震のせいで電車は止まり、バスは運休、タクシーは長蛇の列。迎えなんて呼ぶことができるはずもなく。

時間はただ過ぎていき、このままではらちが明かないから歩いて帰ろうか、と話に上がり始めたとき。

空から雪が舞ってきたのだ。

その日雪予報が出ていたわけではない。

3月にいわき市で雪が降るなんてそうそうあるわけじゃなかったと思う。

大雪だったわけでもない。ただ雪が舞ってきたのだ。

その季節外れの雪が私達と外の世界とを隔てているように思えてひどく混乱した。

長く降り続いたわけではない。時間にしたら10分とか15分とか、そのくらいだったと思う。

それでも私はあの雪のことをいつまでも忘れられないと思う。

 

そんな雪をぼんやり出しながら、私は雪を眺めた。

いろんなことに人それぞれ思い出やトラウマがあるのだと思う。

それすらも包み込んで今朝も雪は静かに降っていただけだった。

 

大学に行く道すがら、白い雪は降り続き、私にまとわりついて、世界から切り離そうとしているようだった。

手袋をしていない親指は切り離されそうなくらい寒さで痛くなった。

雪の降る世界は美しく静かで残酷だと思った。

 

午後学校から帰ってくると疲れてこたつで寝てしまい、起きると外はもう真っ暗で、雪はやんでいた。

 

白い名残を残しつつも、世界は現実を取り戻した。